しみじみといいモノ


とお~い昔の記憶です。
留学を終えて日本に戻り設計事務所に就職した30代のはじめ。
年齢は上なのにいただけるお給料は大卒初任給同等でスタートした私たちの新婚生活。
新聞もとれないほどのギリギリの生活費で、
会社や、近くの図書館に新聞を読みに行く日々。
と、突然、
妻が「リモージュ焼のコーヒーカップを6客フルセットで買う!」と言い出しました。
「へッ!」
と、6畳間で後手に手をついてのけぞる私。
聞けば貧しい暮らしの今こそ美学的なモノに接してないと本当のボンビーになると、
そういうのです。
1客15700円もするフランスの老舗磁器メーカーの定番の6客セットをドッカーン。
買いましたよ、博多の陶磁器安売り専門店に出向いて(泪。
そしてその「アビランド」の名を冠したフランス屈指の名品磁器セットは、
20年以上を経た今も1客もかけることなくわが家の食器棚に、そして週末は
恭しくダイニングテーブルにお出ましになられます。
しみじみといい器は、そしてそれがほんとうに自分の気に入ったものであり、
自分の「今」に寄り添ってくれるはっきりとした確信がもてるなら・・・
贅沢は贅沢にならないということを、
私は作家さんの展覧会を訪ねるたびに思い出すのです。
お恥ずかしい私の昔ばなしでした。
小野哲平さんと早川ユミさんの展覧会、明日の日曜日までの開催です。
 


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